この記事の答え:社内研修と外部研修は優劣ではなく、目的に応じて使い分けます。自社固有の内容、外の視点、継続のしやすさを見て組み合わせます。

「研修は外部に頼むべきか、社内でやるべきか」——その判断基準を持たないまま、惰性で外部研修を発注し続けている企業は少なくありません。コスト削減の観点から内製化を進めようとする企業がある一方、外部研修を活用し続けている企業もある。どちらが正解なのでしょうか。

答えは「目的によって使い分けること」です。この記事では、社内研修と外部研修それぞれの特性を整理し、失敗しない選び方の基準をお伝えします。

社内研修は、どんな場合に向いているのか

社内研修とは、自社の社員が講師・ファシリテーターを務める研修です。以下のような目的に適しています。

▶ 自社独自の知識・文化を伝えたい

製品・サービスの理解、自社の歴史やビジョン、業務プロセスの習得など、外部の人間には教えられない内容は社内研修が適しています。

▶ OJTと組み合わせた現場育成をしたい

実務に直結した育成は、現場のマネジャーや先輩社員が関与する形が効果的です。知識とすぐに実践をつなげられるのが強みです。

▶ コストを抑えて繰り返し実施したい

一度仕組みを作れば、繰り返しの実施コストを抑えられます。ただし、講師育成・教材整備・運営の工数は別途必要です。

外部研修が向いているケース

外部研修は、専門機関や研修会社に委託する形式です。以下のような目的に効果を発揮します。

▶ 社内にない専門知識・スキルを習得させたい

マネジメント、ロジカルシンキング、ファシリテーション、AI活用など、社内に適切な講師がいない領域は外部に依頼する方が質を確保できます。

▶ 社外の視点・刺激を入れたい

社内だけで完結した育成は、視野が狭くなるリスクがあります。外部の事例や他社受講者との交流は、思考の幅を広げる機会になります。

▶ 管理職・経営幹部クラスの育成をしたい

上位職層の育成は、社内の誰かが担うには限界があります。外部の専門家や経験豊富なファシリテーターに任せる方が、参加者の納得感も高まります。

「社内でできること」と「外部に任せるべきこと」の線引きが明確な組織ほど、限られた予算の中で高い育成効果を上げています。長く社内講師だけで回してきた研修も、一度外部の視点を入れると「すぐ使える」という評価に変わることがあります。

教育訓練費用の支出と計画的なOJTの状況

使い分けを考える前に、全体の状況を見ておきます。厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」の企業調査では、OFF-JT(職場を離れて行う研修)または自己啓発支援に費用を支出した企業は54.4%、どちらにも支出していない企業は45.5%でした。OFF-JTのみに支出した企業は28.5%、両方に支出した企業は21.5%です。OFF-JTには社内で行う集合研修も含まれるため、これらは外部研修への支出割合を示す数字ではありません。

同調査の事業所調査では、正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は60.6%でした。企業調査の費用支出と事業所調査の実施状況は対象が異なり、両方に取り組んでいない組織の割合は分かりません。

自社の状況を確認するときは、社内での育成、外部研修の活用、計画的なOJTをそれぞれ見たうえで、目的に合う組み合わせを考えてみてください。

出典:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」(令和8年7月31日公表)

失敗しない選び方の3つの基準

社内・外部どちらを選ぶにしても、以下の3点を基準に判断することを推奨します。

  • 育成目的は何か(何を変えたいのか)

目的が明確でなければ、どちらを選んでも効果は出ません。まず「この研修で何を実現したいか」を定義します。

  • 対象者のレベルと状況はどうか

初歩的なスキルなら社内で、専門性や刺激が必要なら外部で、という切り分けが一般的です。

  • 継続性が必要か、単発でよいか

継続的な育成が必要なテーマは内製化を検討し、年1回程度でいいテーマは外部活用でコストを最適化します。

まとめ:「どちらか」ではなく「どう組み合わせるか」

社内研修と外部研修は、対立するものではなく補完し合うものです。優れた人材育成の仕組みを持つ企業は、目的に応じてこの2つを使い分け、組み合わせています。

「なんとなく外部に頼んでいる」「コスト削減のためだけに内製化しようとしている」という状況なら、一度整理する機会を持つことをお勧めします。

今週、自社で実施している研修を一覧にして、「社内でやるべき理由」または「外部に任せるべき理由」を一行ずつ書き添えてみてください。判断がつかないものこそ、見直しの対象です。

どのテーマを社内で担い、どこを外部に任せるかを整理したいときはご相談ください。