この記事の答え:期待していた人や育ってきた人の退職が続くと、仕事や知見が抜け、残る人の負担が増えて次の人も育ちにくくなります。組織文化の歪みの兆候かもしれないと捉え、辞めた人と残る人の声から確かめます。
採用に力を入れていても、育った人材が離れることがあります。辞める理由は一人ひとり異なりますが、育成・評価・キャリア設計のあり方を見直す手がかりになります。
この記事では、期待していた人や育ってきた人が続けて離れる状態をどう見ればよいか、統計と組織の5つの特徴を手がかりに考えます。
先に結論を書きます。優秀な人ほど辞めていく会社になると、長い目で見て組織の体質が弱ります。その人が担っていた仕事や知見が抜け、残る人に負担がかかり、次の人を育てる余裕も減るからです。退職理由は一人ひとり違います。それでも離職が続くなら、組織文化が見えないところで歪んできている兆候かもしれません。
優秀な人が辞めていく状態は、何の兆候か
期待していた人や育ってきた人が続けて離れると、仕事の引き継ぎだけでは埋められない知見も失われます。残る人の負担が増えれば、次の人を育てる時間も取りにくくなります。こうした状態が続くことが問題です。
動く理由と残る理由は人によって違います。辞めた人と残っている人の両方の声を聞き、それぞれが何を大切にしているか確かめることが出発点です。
そのうえで、個々の退職理由だけにとどまらず、育成・評価・キャリア設計や日々の関わり方に見直せる点がないか考えます。
辞める理由の統計に、見落とされがちな項目があります
厚生労働省の「雇用動向調査」(令和6年)は、転職した人が前職を辞めた理由を集計しています。上位に来るのは、給料(男性10.1%)、労働時間や休日などの条件(女性12.8%)、職場の人間関係(女性11.7%、男性9.0%)です。
注目したいのは、前年からの上昇幅がいちばん大きかった項目です。男性では「会社の将来が不安だった」が7.4%で、前年より2.2ポイント上がっています。
そしてもう一つ。「能力・個性・資格を生かせなかった」は男性3.8%、女性3.7%。割合の大小だけで見過ごしたくない項目です。これらの数字から、自社で誰が辞めやすいかは分かりません。ただ、将来への不安や能力を生かせない感覚が、退職理由になりうることは読み取れます。自社でも同じ声が出ていないか、確かめる手がかりになります。
出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」(転職入職者が前職を辞めた理由別割合)
離職が続くときに確かめたい組織の5つの特徴
組織文化の歪みは、次の5つのところに表れやすいものです。自社に当てはまるものがないか確かめてみてください。
▶ 成長の機会が与えられない
本人が新しい仕事に挑戦したいと考えていても、機会が限られていることがあります。同じ仕事が続くなかで、成長を実感できているか確かめたいところです。
▶ 頑張りが正当に評価されない
成果や工夫が評価に反映されず、努力と報酬のつながりが見えにくい状態は、仕事への納得感に影響します。評価の理由が本人に伝わっているかも確認が必要です。
▶ 上司のマネジメントが機能していない
任される仕事や相談のしやすさは、上司との関わり方に左右されます。本人が力を発揮し、成長できる関わり方になっているかを見直します。
▶ キャリアの将来像が描けない
「この会社にいると、3年後・5年後どうなれるか」が見えなければ、今後の働き方に不安を抱く人もいます。本人の希望と社内の選択肢を話せているかが大切です。
▶ 会社のビジョンや方向性に共感できない
会社の方向性が日々の仕事とどうつながるか見えなくなると、働く意味を考え直すきっかけになることがあります。方向性を伝え、対話する機会があるか確かめます。
期待していた人の離職が続いたとき、退職者の声を丁寧に聞くと「上司との関わり方」や「キャリアの見通し」に理由が集まることがあります。残っている人の声も合わせて聞き、管理職の育成やキャリア面談をどこから見直すか考えます。
定着と成長を両立する組織がやっていること
人が育ち、長く活躍できる環境をつくるために、次のような取り組みが考えられます。
- ストレッチアサインメント:少し背伸びする仕事を継続的に与える
- キャリア面談の定期実施:本人の志向と会社のニーズを擦り合わせる対話
- 成果に連動した評価・報酬:努力と報酬のつながりを見える化する
- 優秀なマネジャーの育成:上司の質が定着率を左右すると理解している
- 社内異動・挑戦機会の提供:会社の中で成長できる選択肢を用意する
これらは一朝一夕には整いません。辞めた人と残っている人の声を踏まえ、自社で足りていないものから見直していくことが大切です。
まとめ:定着は「採用」ではなく「育成と環境」で決まる
期待していた人の離職が続く状態は、組織の体質を少しずつ弱めます。組織文化の歪みが表れている可能性も考え、在職中から育成・評価・キャリア設計を見直すことが大切です。
今週の一歩として、自社で「辞めてほしくなかった」と思う直近の退職者を一人思い浮かべてください。本人が話した理由と、残っている人が感じていることを分けて書き出すと、見直すべき点が見えてくるかもしれません。
辞めていく理由のうち、育成で手を打てる部分を整理したいときはご相談ください。